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Ayu's の金曜日

臭(しゅう)

息子は小さい時から異常に鼻が効く子だった。

人が嗅ぎ分けられないような外の匂いや家の中のニオイにも敏感に反応し、
前の日のご飯をチンしたものなどはすぐにバレた。
魚や肉も新鮮なものは食べたけど、少し日を置いたものは
黙って食卓にだしても、きっちり残していた。

困ったのは、よく保育士さんに「くさい」と言ってしまうこと。

実際、その保育士さんは何のニオイもなかったので
「先生、大丈夫ですよ。先生は全然くさくないので気にしないでくださいね。
本当にすみません。」

といつも声をかけてはいたが、毎度毎度だとやはり気にならない訳がない。

「お母さん、、、やっぱり私、ニオってるんじゃ、、、」と深刻な顔で耳打ちされ、
本当に申し訳なかった。

でもそれは中年の我々両親にも同じくで、「臭(しゅう)を出さないで!」
とよく言われていた。
他人にはわからないレベルかもしれないと思いつつ、やはり年齢も年齢だし、
具体的にどこがニオうのか、どんなニオイなのか、それと向き合うキッカケにはなっていた。

ところがある時から、そういうことを言わなくなった。
あの子が言わないんだから、ニオイの問題はクリアできてると勝手に思っていた。

ある日何気なく、
「ねえ、お母さんと、お父さん、ニオイ、しないよね?」
と聞くと、

「、、、、、、、、あまりネガティブなことは言いたくないんで。」



いつから人の気持ちになってズケズケ言うのをやめられたんだろう!という驚きと嬉しさと、

そして、我々はいつからニオイの指摘をされずに暮らしてた?、、いつから? 一体いつからなの?!
という衝撃と。。。



  1. 2019/07/12(金) 09:55:30|
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Back To USA 12 (最終回)

引越しまであと数日となり準備を進める中、部屋の様子はさらに悪化。

汗をかいたようになっていた壁は、汗どころかひっきりなしに水がにじみでて
水漏れと壁崩れのスピードが増している。
相変わらずの悪臭もどんどん酷くなる。

とうとう、恐れていたことが始まった。
天井からの水漏れだ。

容器で水をキャッチするしかなかったが、それはバケツ一個や二個では間に合わなかった。

これはヤバイ、、、、

引越し1日前、
もういつドサっと天井が崩れるかわからない事態となった。

後から考えたら、その一晩だけ違う部屋に移ることも考えられたけれど、
今までこの状態で暮らしてきてるのだから、1日くらい大丈夫、、と
思い込みと慣れは恐ろしい。

前日から組み立て式のベッドは解体していたので、一晩のみ床で寝る。
何とかなるとは思いつつも、心配で電気はうっすら付けたまま、天井の様子をみつつ、
引越し荷物にもたれ、水が落ちてこない場所に移動しながら、うつらうつらと朝を迎えた。



引越しの朝、ホテルの大工責任者Gに、もう部屋を出るということと鍵の手渡しをするからと
部屋に呼んだ。

Gは部屋の中を見るなりすぐに、

「ええ!! この状態で今日まで住んでた???  ほんとに!!??信じられないぜ。」

もう1日ももたなかっただろうことは大工でなくてもわかっていた。

そして

「とにかく危険だから、すぐに部屋から出たほうがいい」と言われた。

急いで引越しの荷物を廊下に出し、脱出劇のような形で私たちは立ち退いた。




新しい場所に移っても、それはそれなりに色々はあったが、
引越し後、数ヶ月もしないうちに5キロ以上太ったということは、
まあ残念ではあるけど、多少なりとも生活が楽になった証拠でもある。

本格的にAyu’sの商品をたくさん送っていたのもこの時代だ。



毎日色が変わるエンパイヤステイトビルが見えた部屋。
現実に、あそこで暮らしていたのは確かだけど、
あれから20年経った今では夢の中の出来事のようにしか思えない。


けれどあの時がんばれた事は、きっとたくましさの礎となっていて、
今に続いていると信じたい。




                                 (終)

***

連載にするつもりはなかったのに、終わりどころがわからずに
こんなに長くなってすみません。
また次回からは日常の徒然を気楽に書いていきます。
来週の金曜日 はお休みしたいと思います。








  1. 2019/06/28(金) 14:57:55|
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Back To USA 11

部屋探し。
収入からして、マンハッタンに住むのは不可能だ。
対岸のニュージャージがターゲットとなる。
もう部屋のことであまり苦労したくないので、少々高くついても、
情報誌で探して日本人の不動産屋さんにお願いした。

予約を取った日は大雪だったが、なんとか動いたバスに乗り、
NJのバス停で不動産屋のMさんと待ち合わせた。

Mさんは、自分の名前を会社名にして個人でやっているところから
勝手に想像してバリバリキャリアウーマン的な姿を想像していたが、
現れたのは、日本のどこにでもいてそうな普通の主婦な感じだった。
しかもあまり英語が流暢ではなくて、少し不安に思えた。

けれど愛想がよくて、なんだか天然ボケなところがあり、一言一言が面白い。
時々雪に足をとられ何度も転びそうになりながら、一つのアパートに向かった。

アパートのエレベータの中で、Mさんの小さい息子らしき人から電話があった。
お客の私たちがいるにも関わらず、携帯越しに親子ゲンカがはじまった。
仕事の電話とプライベートの電話は分けてないらしい。。。


部屋は1K。アメリカだから日本のワンルームよりは広い。
そしてアパートは基本、個別に洗濯機はないが、ランドリールームがこの部屋の前。
今まで14階から地下を行ったり来たりして洗濯していたことを思うと夢のよう。

ベランダがついており、キッチンが広めなのでここにテーブルも置ける。
キッチンにも窓がついていて、高台のアパートのため眺めがよい。

即決。部屋探し終了。

Mさんもびっくりして「一軒目で決めちゃって大丈夫ですか?」
と聞かれたが、Mさんにはその場で小切手を切り、そこの大家とすぐに契約した。
窓から緑が見えるか見えないか、このポイントは今も昔も変わらない。


さあ、引越し準備だ。



  1. 2019/06/21(金) 08:52:57|
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Back To USA 10

仕事をやめると、当然ながらこの部屋で過ごす時間が増える。

こんな不便な暮らしも一年近く続き、もう慣れてきたと思っていたし、
ちょっとゆっくりできるのかな、と。
しかしそんな甘い考えは、この部屋に暮らす限り通用しなかった。


ある日、水がジャーっと流れ出る音がして、
バスルームをチェック、異常なし。作り替えシンクの方もチェック、異常なし。
水場はすべて異常なし。じゃあどこからこの音が??  

耳を澄まし、音の出てる場所に近づく。    クローゼット????

勢いよく作りつけのクローゼットの扉を開くと、足元が一気にワーッと水浸しになった。
服をかき分けると、奥の壁がぶち破られ、滝のように水が流れ出ている。
服やバッグはビチャビチャ、大惨事となった。

思えばそれが始まりだったように思う。

big goki さまとは1日に3回くらい出会うようになった。
ある時は洗濯物入れの中から、ある時は部屋の真ん中をゆっくり堂々と。
これだけ出会いが増えると不思議なことに、姿が見えなくてもそこにいるとわかる能力が身についた。
さあシャワーを浴びようとしたその時、ボディースポンジの裏にいると直感した。
裸のまま戦うのか、、いや自分の思い込みでやっぱりいなかったって事が一番いい。
それに賭けた。恐る恐るスポンジを素早くひっくり返すと、、、、やっぱ、いるっ!!!!
こんな超能力、決して身につけたくはなかった。

異常な現象の原因は下水道とセントラルヒーティングの配管の老朽化にあった。常にどこかが破れていて、
冬も暖かい配管はgokiさまの巣窟であり天国。もちろんたくさんの小ねずみさん達もお仲間。
どんなに食べ物を一切残さず、水周りの水滴も残さず、寝る前に磨き上げても関係なかった。

築100年近く経っているので当然だが、現在もホテルとして運営しながらの大規模改修は難しいのだろう。


そのうち、なんともいえない悪臭が漂うようになってきた。
下水のわかりやすい臭いではない、たとえようのない異臭だった。

そして、またしばらくすると壁のいたるところが汗をかいてるようになり、水分がしたたり落ちるようになった。

次第に壁が崩れ始めた。掃除しても数時間後にはまた、壁の素材が落ちてくる状態。

あまりに掃除が大変なので、壁をブルーシートのようなもので覆い、シート内に壁のクズが落ちるようにしたものの、
もう、頻繁にパサパサっカサカサっと落ちる音を聞きながらの生活になった。

最初は乾いた音だったのが、水分をたっぷり含んだ塊になってきた時、限界を感じた。
限界というより、何か身の危険を感じた。


タダ部屋はよかったが、恩恵と苦労は同じ量だったと思う。もう十分がんばった。







  1. 2019/06/14(金) 15:10:46|
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Back To USA 9

きっと世界の憧れの街に住んでいるんだろう。
マンハッタンは魅力的だ。刺激的で最先端なのにレトロで、
様々な人種が同居する不思議で素敵な街。    でも。

自分の部屋の窓からは道を挟んで立つ古いビルの部屋の中が見える。
部屋というより、ワンフロアーが縫製工場になっている。

もう夜中に近いのに、明かりはこうこうとしていて、
アジア系の女性たちが一心不乱にミシンを動かしている。
真夏なのにクーラーなしで、毎日毎日。

こうして夜遅くまで、アメリカ人じゃない人達が厳しい条件で働く現実。

ダンサーや歌手や画家が世界の頂点目指してくる。
年中、観光客で賑わう活気ある街は昔も今も魅力的には違いない。
が、それは表面的で、ある一面でしかないことが暮らしてみてよくわかった。

キラキラしている反面、同じくらいの闇も感じざるを得ない。
観光ではなく、暮らすとはこういうことだ。

ある人が、「この街で『自分』っていうものがなかったら、吹き飛ばされるよ。」
と言っていたが、まさにそんな感じ。
街全体がエネルギッシュな代わりに、それについていけないとなると、
ただ疲労が蓄積していくだけだった。

目的と意思と自分自身をはっきりさせないと、なんだか部外者のような気持ちになってくる。
決して言葉や文化や人種だけの問題ではない。これはこの街独特の空気感。
ちょっと日本では味わえない感覚に違いない。

私はどうだろう。
最初は異文化に慣れるのに精一杯だったけど、やがて
目的もなくただ時間を潰しているような気がしていた。
そんな暮らしを一年ほど続けて、なんだか心身共に疲れきり、決め手になる理由もなく
私は仕事を辞めた。

ちょうどその頃と同じくして、部屋の崩壊ははじまったのだ。




  1. 2019/06/07(金) 20:08:02|
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