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Ayu's の金曜日

Back To USA 6

今度の空き部屋は正方形で、広さは20畳くらいだろうか。
日当たりはいいが、大通り面していて車の騒音はかなりのものだ。

引越しや冷蔵庫の件でわかるように、前の住人は片付けや掃除が苦手。
この汚部屋の掃除は相当なものだった。

一部屋なのに、どういうわけかユニットバスが二つある。

前住人はバスタブにベニヤ板のようなもので蓋をして、物置にし、
ちょっとした台をとりつけて、ここで料理をしていたようだ。
少し改造がしてあり、洗面台が台所の流しのように作り変えられている。

問題はもう一つのバスルーム。ここは想像を絶する作りになっている。
洗面所の管は詰まったか壊れたかしたのだろう。
そこで管は横のバスタブを突き破り、バスタブ内に水が流れ込むように改造してある。
すなわち、歯磨きや洗顔で流れる汚水が浴槽内に流れ、どう考えても気持ちが悪い。
この変な配管のせいでお湯を張ることは決してできない。シャワーのみという訳か。

次に洗面所の水道は最初の数十秒はオレンジ色の錆びた水しか出ない。
洗面台とバスタブ間の管が詰まり気味なので、思いっきり水を流してみたら、
信じられない量の詰まりが浴槽へ一気に流れ出てきた。

出てきたものを詳しく説明するのはやめておこう。
それほど神経質でない私が、思わず悲鳴をあげたほどだ。

お次は開かずの扉が一つ。
ここは隣の部屋につながっていて、色々世話をしてくれてるJの部屋だった。
もちろん鍵はかかっていて、お互い行き来することはできないが、
時々夫婦ゲンカの声が聞こえてくるところを見ると、こちらの声も丸聞こえなのだ。

前の住人は土足で部屋を使っていた為、カーペットはドロドロだったが、
張り替えるなんてできないので、とりあえず洗剤で水拭きしまくった。
ユニットバスも土足で使っていた為、公園の公衆トイレのような感じ。

そんな部屋でも、日本人同士の私たち。どうしても土足で生活をしたくない。
となると、やっぱりこの汚れをなんとしても拭くしかなかった。
そして拭いたカーペットの上に新しいラグを何枚か部分的に敷き、なんとか素足で歩けるようにした。

こんなに汚いところは生まれて初めてだった。
半泣きになりながら這いつくばって床掃除したこと、きっといつまでも忘れない。







  1. 2019/05/17(金) 17:59:24|
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Back To USA 5

部屋チェンジの申し入れを夫の方からしてもらうと、案の定渋い顔をされた。
お世話をしてくれているのは、ズケズケとはっきり物を言うオーストラリア人女性のJ。
ものすごく顔が広く、様々な点で口利きしてもらっていた。

彼女が眉間にしわを寄せて不機嫌な返事をしているところが目に浮かぶ。。
とにかく今はどうにもできないということだった。


ところが数日後、窓際の部屋から引越しをするという夫婦がいて、
そのあとにそこに入ってはどうかという話が舞い込んだ。
よいタイミング!大通りに面したその部屋はとても明るい。


ついでに引越しの手伝いをしてくれということで、快く引き受けた。

当日部屋に行くと目を疑った。。。本当に今日引越しなの?
荷造りが全くできていない。夫婦二人暮らしなのに物が異常に多く、散乱している。
台湾人の奥さんはこういう事が苦手なようで、荷造りをせずに、同じ場所にずっと掃除機をかけたりしている。
そしてネズミ捕りに引っかかってるネズミを見つけ、大発狂し、さらにやる気をなくしたようだ。

(ネズミ、、出るんだな。この片付けられない部屋で、どのくらい引っかかったままっだったのかな、、)

私はそれは見ないようにした。それでもあの部屋よりここの方がマシだと信じたい。

アメリカはアパートに引越しをするときに冷蔵庫を持っていかない。基本備え付けになっている。

この部屋の冷蔵庫は自分たちで買ったようだが、引越し先にあるからということで置いていきたいらしく
私たちに買取をしてくれないかと言われた。

必要だけれども、買取価格は良心的ではなかった。アメリカでは中古品は日本よりかなり高く取引されるが、
日本から来たばかりの私にしたら、かなり高いように感じられた。

結局、何度かねぎったり、断ってみたり色々したが折れてくれず、高値で買うことになってしまったのだが、
庫内の掃除どころか、消費期限切れの食品を全部いれたまま残していくという感覚には驚きを隠せなかった。


明日から本格的に掃除に取りかかる。有りえない汚さと格闘するのだ。
それと同時に夫との暮らしもここでスタートすることになった。

なんだかよく見ると、この部屋には様々におかしい点が存在しているようだ。

このへんてこりんな部屋で、へんてこりんな暮らしの幕開け。



  1. 2019/05/10(金) 10:19:25|
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Back To USA 4

親戚から結婚祝いをいただいてたので、ちょっとしたお返しに
なにか NYらしいもの!と思い、ティファニー本店に出かける。
シンプルな小物をいくつか選び、包装してもらってる間は束の間のセレブ気分。

しかし、戻るところはあそこ。。。

やたら広い部屋がかえって寂しさを倍増させる。昼間なのに、なんだか怖い。
テーブルがないので横に倒したトランクの上にハンカチを広げて一人食事。

夫は忙しく、朝は合わないままルームメイトの部屋から出勤で夜も遅かった。


はてさて日々の食料品はどうしたらよいのか、立地が観光地のど真ん中でスーパーなどない。
日本食料品店はあるだけありがたいが、かなりの距離を歩かなければならないし、気軽に買える価格ではない。
 
何ブロックも先の個人店を回り、イタリア人の店で肉を買い、スパニッシュの店で野菜と果物を買い、
小麦粉や砂糖、飲み水はユダヤ系の店に、コーヒー豆はあそこで、チーズはあそこ、パンはあっち
とにかく同じところでまとめて買うことができないし、冷蔵庫はないからその日使う分だけをこまめに調達。

しかしどこの店でも猫を飼っている。みんな動物好き、、なわけではなくネズミ捕りが目的だ。
日本なら衛生面で相当な問題になりそうだが、ここでは普通らしい。

アメリカの食事はなんでもかんでもハイカロリーで、おデブになるのはいとも簡単。覚悟もしていた。
ホテルのすぐ近所にも24時間営業で、いきなり路面にショーケースのケーキ屋があり、
大きさも日本の倍以上。これを真夜中に食べる人が?  いるから24時間なんだろうか。
けれど私は郊外に引っ越しをするまで、どんなに食べても太ることはなかった。(特に痩せもしなかったが)
食料調達一つとっても、かなりの運動量だったのだろう。

洗濯は地下のコインランドリー。宿泊客と同じところを使えたが、通路は従業員専用の扉から
ボロ階段かボロエレベーターを使わねばならなかった。


最初の一週間は、とにかく周りに何があるか把握するだけ。

しかしそこからが問題で、ビザの関係もあり就労はできない、友達はいない、やることがない。

観葉植物を買ってきて飾ってみたり、絵を描いてみたり、自分なりに色々やってみたが、
気分が落ち込んでどうしようもない。

地震でライフラインが全く閉ざされた経験もしていたから、どんな環境にも適応できる自信があったし、
一応、食べたり寝たりできて、温度調整は難しいが湯も出て、これで何か言うのはわがままだと思っていた。

ところがあっさりギブアップ。
物質的なことよりも、精神的に参って来ているのは確実だった。何が一番の原因かはわからない。

せめて1日のうちの数時間でも部屋に日が当たれば少しはマシなんだろうか。。。。?

もう、わがままでもよい。どう思われようが、、
部屋のチェンジができるかどうか打診する事しか思いつかなかった。








  1. 2019/05/03(金) 18:17:23|
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Back to USA 3

マンハッタンのとある一室。そこは古いホテルだった。

ニューヨークでホテル住まい。
これだけ聞くと、どれだけ豪華な暮らしなの?と想像してしまうかもしれない。

しかし断言する。
自分の中でこれ以下の暮らしは後にも先にもなかった。

1929年ごろに建てられたアール・デコ調の高層ホテル、当時は2500室ほどの客室があったらしい。
あのニコラ・テスラのサインも飾ってあったりして、古い歴史があり味がある。
私が行った頃は老朽化によりリフォームを繰り返し、色々なフロアが工事中で
客室として使っていない部屋もかなりあった。

いくつかの会社の事務所にもなっており、一部がホテル関係者などの住居にもなっていた。
夫は一時期このホテルの改修を手伝っていたことがあり、当時のルームメイトとも長い付き合いだ。
大工仕事をする予定はもうないが、当時のコネを使い、あくまでとりあえず、ここのどこか一室を借りる。
マンハッタンの家賃は東京以上だということを考えると他に選択の余地はなかった。


海外移住ということもあり必要最低限の荷物しか持ってこれず私はトランク一つで
再びアメリカ、ニューヨークの地に足をつけた。

夫はまだルームシェアをしており、ひとまずそちらに。私は部屋の用意をしてくれた人から
鍵を預かり別の部屋にということになった。


客室でないフロアのエレベーターを降りると左と右に通路が分かれる。

右のエリアはある程度、事務所や住居で人の気配がある。左側は、、、

ジーーージジジジ、、、ジーーー、、と音を立て
天井の電気がついたり消えたり。リフォームに入る為、完全なる廃墟のエリアだった。
多少敏感な私は、背筋がすぅーーっと寒くなるのを覚えた。足がすくむほどの薄気味悪さ。

後で聞いた話ではここは霊感のある人は必ず何やら見えるエリアらしい。 やっぱりね。

新婚旅行にでも来たかのような浮いた気分はこの時スッと消えた。

嫌な予感しかない。でもとにかく今は何も考えてはいけない。夫とその部屋に入った。
電気をつけても薄暗く、だだっ広い。二十畳くらいあるのでは。
客室用の壊れた机と小さなチェスト、マットレスだけの簡素なベッド、小さなスタンドランプ。

窓の外の景色はホテルの壁。マンハッタン特有のクラクション、パトカーや消防車のけたたましい音。

一番驚いたのは、ユニットバスのドアがないこと。壊れてしまって外されたのだろう。
したがってトイレをするときも完全オープン状態。

極め付けが部屋の真ん中を、のそのそ横切る茶黒のあれ。 あれはもしや、、、


ああ、ゴッキーさま、、、、
アメリカ育ちのあなたってば、ここに住む人と同じくビッグサイズなのね。


私はここに住めるのだろうか。 いや住む場所はもうここしかない。



  1. 2019/04/26(金) 21:55:42|
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Back to USA 2

渡米するにあたっては、1日も早くビザ取得の準備を進めなければならなかった。

その為、夫婦になっておかなければ何も進めることができない。
彼が実家の母に電話して、役場から用紙をもらい、必要事項を書き込んで、
急いで婚姻届を出すようにと、既に頼んでいたようだ。

婚姻届とは、、
二人で良き日を決め、手をつないだりして役所に提出、、なんて光景を想像していたが
現実はそうはいかないものだ。

義母は言われるがままに記入し提出してくれた。が、この作業を自分たちでやらなかった為に、
その日がいつなのか、私たちはその後、何年も覚えられないままとなってしまった。

最近覚えられるきっかけになったのは実は息子の誕生日と同じだったことが判明してからだ。
それでも長年スルーしていた為に誕生日会はするけど結婚記念日はやっぱり忘れてしまう。

渡米後のことはあまり考えてなかった。行ってみなければ何もわからない。
短期留学時代の英語なんてほぼ役に立たないと想像できたが、特に準備もしなかった。
新しい環境には興味があるほうなので、不安よりも希望の方が大きかった。

これから生活する場所は当面、彼が以前住んでいたマンハッタンのとある一室で
私は留学中にそこを何度か訪れていたから大体の雰囲気はわかっていた。
場所がわかっているだけに、なんとなく安心感があったのだ。

この先、留学と生活するのとではまったく次元が違うというのも知らないで。


  1. 2019/04/19(金) 08:51:42|
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